今月のキーワード
人の歴史は変化の歴史といっても過言ではないでしょう。有史以来、人はあまたの変化を積み重ね、その時々の歴史を紡いできました。もし、あのときの○○が○○だったら、○○は○○になっていたかもしれない。過去に対して“もし”はご法度ですが、振り返れば無数の「変化の分岐点」があったはずです。そこで選ばれなかったものは表舞台に登場することなく消え去り、残ったものだけがその是非にかかわらず、歴史に刻まれるのです。
世界のターニングポイント
人々の営みに世界規模で劇的な変化をもたらしたのは、何といっても18世紀半ばから19世紀に起こった“産業革命(工業化)”です。蒸気機関の開発により工場制機械工業が成立、イギリスを皮切りにベルギー、フランス、アメリカ、ドイツ、ロシア、日本で工業化が進んでいきました。蒸気船や鉄道の発明で人や物の流通が活発になったことも、後の大きな変化につながっています。
漱石の「内発的」と「外発的」
日本での大きな変化といえば、明治維新がまず挙げられるでしょう。
文豪・夏目漱石は明治44年の講演録『現代日本の開化』の中で、明治維新後の日本の急速な西洋化を指して「外からおっかぶさった他の力でやむを得ず」なされた開化である、としました。つまり、機が熟して内側から自然に発展していくような「内発的」開化ではなく、黒船など諸外国の外圧によってもたらされた「外発的」開化で、中身の伴わない上滑りの開化だと評したのです。
“開化”は知識が開けて文化が進歩するという意味ですが、ここでは“変化”と置き換えてもいいでしょう。
変化における内発性と外発性